九州北部に降り続いた記録的な大雨のせいで、自動車用の鉄のボルトを冷やすための地下に掘ってある熱処理タンクの口元が大きく空いている状態で水が混入して冷却用の焼入れ油が大量に漏れ出た佐賀鉄工所の大町工場。
焼入れ油の名称は「 クエンチオイル 」というが、どんな成分で環境は人体への健康面で有害なのかの心配が拭えない。
【 本稿の記事ページの目次 】
佐賀鉄工所から漏れ出た油の種類と成分表
ボルトねじ製造メーカーの佐賀鉄工所の大町工場【 佐賀県杵島郡大町町大字福母1624 】の冷却用タンク( 油槽 )から焼入れ油が11万4,000リットルが外に漏れ出した。
大町工場によると、流出したのは鉄の強度を高める工程で冷却に使う「 クエンチオイル 」と呼ばれる石油由来の油で、流出量は約5万リットルと推定している。
工場の建屋内には八つの地下油槽があり、自動車部品のボルトを製造している。
担当者によると、28日午前4時ごろ、建屋内に鉄砲水が入り込み、土のうなどを積んだが、工場内はひざ上まで浸水した。
その際、24時間稼働する地下油槽にふたがないため、中の油が外に流れ出たという。
鉄工所によると、油は触れても人体に影響はないという。
一般的な焼入れ油である冷却油は「 クエンチオイル 」と呼ばれているが、佐賀鉄工所から漏れ出たクエンチオイルの主な成分は、なにがあるのだろうか?
沸点 | 比率 | 成分 | 引火点 |
---|---|---|---|
360°C以上 | 44.9wt% | – | – |
200~360°C | 54.7wt% | ナフタレン | 79°C |
ビフェニール | 112.8°C | ||
アセナフテン | 引火点135°C | ||
アントラセン | 引火点121°C | ||
200°C | 0.4wt% | スチレン | 32°C |
ベンゼン | -10°C | ||
– | 数百stppm | コーク( カーボンの塊 ) | – |
上のクエンチオイルの成分一覧表は、佐賀鉄工所から漏れ出た冷却用の焼入れ油と必ずしも同一の油と同じであるとは限らないが、一般的な成分の構成ではある。
では、「 焼入れ油 」とは何か?
金属を所定の高温状態から急冷させる熱処理である。
つまり、焼入れ油とは佐賀鉄工所で製品化したボルトの冷却に使用するために使う油の事で、クエンチオイルを指す。
検索すると出てくるのが、日本グリースなどの企業名と以下の4種類のクエンチオイルだ。
- ハイスピード
- ホット
- セミホット
- ホット
冷却用の焼入れ油が漏れ出した佐賀鉄工所のクエンチオイルが、どこのメーカーの何という種類の油かまでは存じ上げないが、臭いがキツイ。
県は、流出した油の量について、当初、最大で11万4,000リットルにのぼる可能性があるとしていましたが、確認を進めた結果、流出した油の量はおよそ5万リットルにのぼるとみられると発表しました。
県や鉄工所によりますと、この工場ではおもに自動車用のボルトを製造していて、今回、流れ出たのは高温で焼いた鉄製のボルトを冷却するために使われる「 ダフニークエンチ 」という工業用の油だということです。
工場内にはおよそ1万2,000リットル入る油のタンクあわせて8つ並んでいましたが、ふたがなかったため、大雨で流れ込んだ水と一緒に外部に流出したとみられています。
ダフニークエンチ油は熱処理用の鉱物油であるとの最新情報が読者様から寄せられたので、さっそく調べてみると取り扱いの種類は多岐に渡る事が判明。
クエンチオイルの中の「 ダフニークエンチ油 」は、分留範囲の狭い
精製度の優れたパラフィン系鉱油に、熱安定性に優れた冷却性向上剤を配合した最高級迅速焼入油だ。
油の除去には吸着マットを1枚1枚撒いて回収するという地道な作業を繰り返しているなか環境汚染も心配だが人体への悪影響は、ないのだろうか?
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佐賀鉄工所から流れ出た冷却油は有害か?
佐賀鉄工所の大町工場の冷却用タンクから流れ出た焼入れ油は、環境汚染を引き起こす有害物質なのかが心配になる。
黒い油が住宅の中にまで侵入している地域もあるが、健康面への影響は?
危険有害性の要約 GHS分類 分類基準に該当しない
危険有害性情報 現在のところ有用な情報なし
上記引用のホットクエンチ油が、佐賀鉄工所から漏れ出た焼入れ油と同一の品種かどうかは分からないが、健康被害は確認されていないので有害物質ではない。
ただし水が引く前に油を除去しないと土壌に油が染み込んでしまい、来年以降に収穫予定の農作物に影響が出る可能性があるとしているが、有害な物質でなくとも油が付着した農作物は売り物にならないので収穫が出来ない。
このうち油が流出した佐賀鉄工所大町工場から200メートルほど離れた水田や畑では、栽培している米や大豆の収穫の時期をまもなく迎えるところでした。
しかし油が混じった水が流れ込んだ影響で、ほとんど収穫できない見通しだということです。
一回、体に付くと3回位は石鹸で洗わないと落ちないそうであるが。
大町町の野口さんから投稿された写真です。水と一緒に家の中まで油が入ってきてます。 pic.twitter.com/JXg3rZN8th
— サガテレビ【公式】 (@sagatv_3) August 28, 2019
漏れ出た焼入れ油は本当に引火性はないか?
一部報道では今回、流れ出た焼入れ油は引火性は無いと言われているが本当だろうか?
1.4災害発生状況 開放中の配管継ぎ目からクエンチオイルが噴出した。その後火災が発生した。
3.科学的要因の調査 周辺に火災に関与したと考えられる可燃物がないことや事故時の証言からクエンチオイルが火災原因物質である。
クエンチオイル物性 自己発熱を開始する温度は、410°C
引火性は無いものの自己発熱の開始温度は410°Cなので、どのみち漏れ出た焼入れ油が発火する危険性は無いと見ていい。
では流れ出た冷却用油は、どこまで広がっているのだろうか?
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付着した焼入れ油を除去し洗浄する方法は?
佐賀鉄工所の大町工場から流れ出たパラフィン系鉱油が、家屋にまで流れ込み臭いのキツイ鉱物油の除去に苦労されている方々も多いと思われる。
4日に本稿のコメント欄に読者様から有益な新情報が書き込まれたので早速、以下に引用でご紹介させて頂く。
屋内の家具等に付着している油膜などはペット用のシャンプー剤として販売されているオレンジの皮からとったリモネンを主成分とするものがネット販売などで出回っています。
( 薄めたものは花王石鹸からオレンジボーイの商品名でホームセンターで販売されています )
オレンジですので天然物質で且つ高い消臭効果があります。
重油の鼻を衝くにおいも半日ほどで使用料にもよりますが消えます。
つまり、「 オレンジの皮からとったリモネンを主成分としたペット用シャンプー 」で洗浄作業すると、クエンチオイル鉱物油の臭いの除去に有効だという。
以下にインターネットで販売されているシャンプーの商品リンクを貼るが、私自身が
実際に使って効果を確認したわけではないので使用は自己責任で、お願いしたい。
また新たな情報が入り次第、順次掲載して行く所存。
漏れ出た焼入れ油は六角川と有明海に流出?
佐賀鉄工所の大町工場から流出した焼入れ油のクエンチオイルは、近くを流れる六角川にも流れ込み、さらに有明海にも流れ込んでいるとの報道。↓
【九州北部大雨関連情報】有明海で油が浮いているのを国交省が確認 佐賀・大町町の鉄工所から流出の油か #大雨 #有明海— TBS NEWS 防災 (@TBSNEWS6) August 30, 2019
一応、動植物への被害の影響が即座に出る様な毒性の強い油では無いものの、それでも農業および漁業に与える影響は深刻である。
いかに焼入れ油が人体に無害だとしても、油まみれの魚や農作物は売り物にならない。
【災害派遣】
8月28日夜~29日未明にかけて、佐世保地方隊は、#佐賀県 の鉄工所及び順天堂病院周辺における流出した油の拡大を防ぐため、オイルフェンスを設置しました。引き続き、佐世保地方隊は、陸上自衛隊 及び地元自治体等と協力して、流出した油の拡大防止及び回収に全力を尽くしてまいります。 pic.twitter.com/p69ey001bg— 防衛省 海上自衛隊 (@JMSDF_PAO) August 29, 2019
災害派遣の要請を受けて駆けつけた自衛隊も、オイルフェンスを張るなどして流れ出た焼入れ油の除去作業に懸命だが数万リットルという量が量だけに、やっかいだ。
県有明海漁協によりますと「 佐賀鉄工所の黒い油は六角川にも有明海にも流れていない。
有明海に見える油膜は車のガソリンや住宅から流れ出たものだとみられ一時的なもの 」としています。
つまり、六角川と有明海に浮かぶ油膜は佐賀鉄工所の大町工場から流れ出たダフニークエンチオイルではなく、車のガソリンであり一般住宅から漏れ出たもの。
さらに冷却油が六角川の河口と、有明海にも流出している事が報じられているが実際には六角川にも有明海にも、流出していないとの事。
右下の海峡が有明海で、佐賀鉄工所の大町工場のすぐ南を流れる六角川から有明海に流れ出ているとの報道もあり困惑するが、地元の佐賀テレビは否定している。
NHK NEWS WEBも、六角川と有明海には流れ出ていないと報じていたが実際に確認したわけでは無いので真相は不明だが、いかに無害とはいえ生態系への影響が心配される。
ところで佐賀鉄工所は1990年の7月にも油の流出事故を起こしていたのである。
焼入れ油が流出でインターネットの反応は?
C-2も出動‼️
佐賀県での豪雨に伴う油流出対処に必要な油吸着マット輸送のため、入間基地へ❗️動画は物資積込時のものです。そして佐賀に向かいました。#航空自衛隊 #美保基地 #豪雨災害 pic.twitter.com/6NN9CSqbM6— 航空自衛隊美保基地 (@MIHO_AB) August 30, 2019
では焼入れ油が流出したことで、インターネット上の反応を見ていきたい。
ただし、油の除去はかなり困難な作業で、水が引いてしまった後は地面に付着しています。これをどうするか。また農作物にも付着しています。水は引いたとしても、今後の残留油分対策が極めて重要です。 pic.twitter.com/jKtYPI7nKG
— 大串博志 (@OogushiHiroshi) August 30, 2019
大町町
順天堂病院から1.5キロの34号線沿いです午前中は油の臭いがきつかったけど
夕方に入り、生ゴミ臭が
きつくなってきました😵
風が気持ちよくなってきたんだけど
臭いが、、ゴムボートでここまで避難されてこられた方もいた様子
用水路もまだ油が浮いている
佐賀
大雨
冠水
武雄
被害状況 pic.twitter.com/5UVr4QADIf— tori (@tori32417368) August 30, 2019
自宅付近に戻る。佐賀鉄工所の社員さんたちが総出で清掃してます。 pic.twitter.com/fQAAfSQPvn
— Shoko Ogushi (@vostokintheair) August 30, 2019
佐賀鉄工所の油の処理頑張ってる従業員さんの方々、救助も大変なのに手伝ってくれている自衛隊の方々頑張ってくれてありがとうございます。
急いで対処しなくちゃいけないのが現状ですが熱中症など身体に気をつけてくださいね。
佐賀鉄工所に対して潰れろとか言う人はその前に自分の出来る事を考えて。— チョロプー好きな淳鬼魑 (@sakutsuki_j) August 29, 2019
九州の佐賀鉄工所油流出で水質汚染後の再興は困難を極める。河川管理者が海に油を流出させまいと堰き止めた場合、水がはけず、水田に油が浮かび汚水を汲み出すしかない状況は水稲共済加入でも補償しきれない。火災保険に水害特約をつけている人は少ない。去年の広島水害レベルの国の決定が急がれる。🍎
— Kana 🍎🍎PU (@idrZhfE0wXXxGAF)August 30, 2019
確かに焼入れ油である、クエンチオイルは人体の健康に有害な影響はなくても漏れ出した油が付着した農作物や魚は売れず、商品として売り物にならない。
数万リットルが漏れ出した冷却用の油の回収作業も並大抵のことではない。
佐賀鉄工所の大町工場が有る佐賀平野は、満潮時に有明海の海面や六角川の水位よりも市街地の方が低くなる構造になっているから、大雨などでは冠水しやすい。
六角川の水門を開ければ浸水した水の引きも早いが、そうすると今度は漏れ出した冷却用の油が一気に河川や、海に流出するのでなかなか開けられない事情がある。
皆様ご苦労様です。クリンチ油ですがタービンオイルに近いように見受けられます。「ダフニー」にということですので旧出光興産の製品だと思います。いづれにせよ鉱物油ですので家庭用の石鹸類では分解しません。オイルマットによる吸着を初期段階で行い「SNOM(スノム)」という商品名で出回っている生分解性油処理剤を行っている近くの業者にお願いしてみてください。落花生の殻、おがくずに鉱物油を餌にして分解するバクテリアを仕込んだものが出回っています。
屋内の家具等に付着している油膜などはペット用のシャンプー剤として販売されているオレンジの皮からとったリモネンを主成分とするものがネット販売などで出回っています。(薄めたものは花王石鹸からオレンジボーイの商品名でホームセンターで販売されています)、オレンジですので天然物質で且つ高い消臭効果があります。重油の鼻を衝くにおいも半日ほどで使用料にもよりますが消えます。SNOMは土壌中にしみ込んだ場合でもうまく使えば土壌を回復させピーナッツの殻、おがくずは有機肥料に変わります。海上に流れ出たものも国土交通省の認可を受けているところがありますので違法行為にはならなくて済みます。
三澤 利幸さま、素晴らしい新情報を頂き誠にありがとうございます。
焼入れ油に関して、相当お詳しいですね。
非常に有益な価値の有る情報を頂きました。
自宅に流れ込んで来た油の除去作業が、うまく行かずにお困りの方々も
大勢いらっしゃるかと思われるので、さっそく記事でシェアさせて頂きます。
ダフニークエンチ油は、臭いがキツイと報道されているので
困っている住民の方々も、たくさんいらっしゃるので、
消臭作業にも、大きなヒントになると思われます。